活版＋カレー

【豚肩ロース肉のカレー焼き／￥900／ふらいぱん／中央区銀座3丁目】
長い間、名刺に頭を悩ませていた。
これまで手を変え品を変え色んなやり方で自分の名刺を作ってきたんだけど、
どれも、こう、シックリくる感じのモノが出来上がらなかったのだ。
そりゃデザインの素養がないボクが自宅のマックに向って、
イラストレーターであれこれやってるレベルだから、
いいものができるはずがない。
作っては気に入らなくなって新しいモノを作り、
気に入らなくなっては新しいモノを作ってまた飽きる、をくり返してきた。
だいたい自分の名刺が気に入らなくなるのは
誰かのカッチョイイ名刺をもらったときだ。
過去にもらった名刺のなかでも、「うおっ！」と思わず声が出てしまうほど
インパクトがあったのは、強烈な個性を放ってるタイプ。
広告業界のスター☆クリエイター、風とロックの箭内道彦氏の名刺は
可愛いイチゴのイラストがポンとあって、
なんと、ホントにイチゴの香りを漂わせる逸品。
名刺ファイルに入れた後も時々取り出してはクンクン匂いを嗅いで堪能した。
テレビ業界のスター☆放送作家、小山薫堂氏の名刺は縦書きで
表にド〜ンと毛筆で名前が書かれているインパクトのある名刺。
その脇に小さく印刷されている文字に目をやると、
なんとそこには「題字：笠智衆」とある。
え〜！　あの笠智衆さんっ！？！？
いつ？　どこで？　なんて思いながら何度かその書体を真似て
自分の名前を書いてみたりなんかした（アホか！）
すごいのがあるもんだな〜、なんて思いながら、ま、ボクがそこまで
やってしまったら「お前は何様じゃ！」ってことになるに決まってるから、
そんな大胆な行動には出られない。
というか、そもそもそんな名刺はボクには作れないのだ。
さんざん頭を悩ませた結果、デザインで頑張るのはあきらめることにした。
じゃあ、デザインじゃなくて印刷方法にこだわってみよう、と。
そんなこんなで色々調べていて出会ったのが、「中村活字」という会社。
昔ながらの活字を一文字ずつ組んで印刷する活版印刷の技法をいまだに
続けているレアな印刷会社である。
早速たずねて活版印刷のなんたるかをアレコレと聞いてきた。
そして、ついにボクはこの方法で名刺を作ることに決意を固めたのだ！
中村さんのアドバイスにしたがって、必要最低限の情報を入れただけの
超シンプルなデザインで依頼。
そして、今日、ボクがこのさき長い長い年月を共に過ごすことになる名刺が
ついに完成した。
「活版印刷には特有の手触りと品格があり、その文字の美しさには定評がある」
そうで、見る人が見たらひと目でそれが活版であることがわかるらしい。
知る人ぞ知る、みたいな。
なんか、そーゆーの好き。
つか、そーゆーの大好き。
（アホだね〜、やはり）
だから明日以降、ボクと名刺交換させていただくことになるかもしれない方々は
受け取った時に「あ、活版ですね、これ」とかなんとか言ってやって下さい。
もう、うれしくてその場で抱き締めちゃいますよ〜！！！
ということで、ノリノリついでに帰り道に通ったカフェで
とりあえず豚肉カレー焼き食べときました。
（水野）